シカゴオートショー2019で世界初公開されてロードスターの30周年記念モデル。
今回は、その記念モデル専用外装色「Racing Orange(レーシングオレンジ)」についてです。
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この30周年記念モデルも専用色である「レーシングオレンジ」は、1989年のシカゴオートショーで注目を浴びた「MX-5 Miata Club Racer」のイエローがヒントになった、と開発主査である中山氏が語っています。当時のイエローを再現するのではなく、あえて今回は30年先のロードスターへの期待を込めて、「新しい一日の始まるを予感させる朝焼けのようなオレンジ系の特別色」を開発したそうです。
ちなみに、今回のオートショーで赤、青、白の3台を展示したのは30年前のオマージュなんだとか。
この新開発の「レーシングオレンジ」はオレンジを構成する顔料一つ一つのキャラクターを考えながら、もっとも高い彩度と明度を両立できるように、配合を緻密に調整を行いました。
あえて、メタリックカラーにせずソリッドカラーにすることでスポーツカーとしての個性を表現したそうです。
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「レーシングオレンジ」の開発を担当した岡本氏は、ソウルレッドクリスタルメタリックやマシーングレープレミアムメタリックを開発したカラーデザイナー。
今回の新色開発も並々ならぬ苦労があったそうです。
オレンジは、顔料の中でももっとも透明度の高いイエローとレッドの組み合わせで構成されており、塗料の隠蔽性が悪いという特徴があるため、綺麗な色を仕上げるには何度も塗り重ねていく必要です。これは、現在のマツダのどのカラーとも塗装の仕方が異なるため、専用の工程を用意しなければいけないんだとか。
今回の開発工程や日数、中山氏が考えた「彩度も明度も高い鮮やかなオレンジ」を考えると経験のあるデザイナーはやろうとは思わないそうですが、30周年という特別なモデルを実現するためにサプライヤー、生産技術、工場と一つになって開発を行ったそうです。
今回の塗装ラインは「限定車」だからできた特別なひと工夫を加えて、なんとか実現。詳細は企業秘密なんだそうですが、全員がひとつになったからこそ完成した特別なカラーです。
ちなみに、岡本氏はこう語っています。
「かつてマツダ車には、いくつかのボディカラーがあったことを覚えておられますか。記憶にある方は、もしかしたら「今回苦労したっていうけど、昔の似たような色味を再現すればいいのでは?」と思うかもしれません。でもそれは違います。当時と現在では塗装の性能要件が大きく異なり、工場の塗装工程の考え方も大きく変わっています。当時の油性塗装に対し、現在は環境負荷の少ない塗装工程の中で実現しているため、「当時の再現」をするにもすべて一から設計を見直さなければなりません。しかも、この塗装工程で高意匠カラーの開発は極めて難しいんです。」

このように、新色開発というのは大変な苦労があるようです。
記念モデルに対して新色を開発するのは、異例な事だとも中山氏は語っていました。
ロードスター30周年記念モデルには、開発陣の情熱と想いが込められています。
30周年、本当におめでとうございます。