前々から存在は知っていましたが、開放日があることを知らずにいました。
今回は、開放日が発覚したので行ってみることに。

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「東京湾第三海堡遺構」は追浜展示場(横須賀市浦郷町)に展示されています。
開放日は、毎月第一日曜日10:00 ~ 16:00(ただし、1月のみ第2日曜日)
見学は無料です。
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写真は、入口です。
奥に見えるのは、日産追浜工場です。
自由に出入りでき、案内人もいらっしゃるので、説明を聞きながら回ることもできます。

中の説明をするまえに、そもそも「東京湾第三海堡」とはなんなんでしょうか?
江戸時代末期、黒船をはじめとする外国船の来航に驚いた幕府は砲台を置く「台場」を築き、明治政府になって、首都東京を防護するため東京湾岸一帯に24の要塞が建設されました。そのうちの3つは海上の人工島に砲台を備えた海上要塞、すなわち、海堡でした。
第一海堡、第二海堡は千葉県冨津沖にありますが、横須賀観音崎沖の推進39m の激しい潮流の浦賀水道内に建設されたのが第三海堡でした。第三海堡の建設は困難を極め、約30年の歳月を費やして大正10年(1921)に完成しました。

ー「追浜(おっぱま)の歴史遺産 見学のしおり 横須賀市指定重要文化財 東京湾第三海堡物語 建設~崩壊~撤去~移設・保存」より一部引用ー
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※画像引用元:国土交通省関東地方整備局|東京湾の海堡とは

東京湾を守る海上要塞だったんですね。
第三海堡の大きさは、東京ドーム2個分だったそうです。
しかしながら、関東大震災に遭い、施設の3分の1が水没して機能不全となってしまったそうです。その後しばらく放置されていましたが、近年は浦賀水道を通る船舶の航行を妨げる障害物となっていたため、平成12年(2000)~平成19年(2007)にかけて撤去工事が行われました。
その際に、この貴重な建物を残すべく、重要なもののみは陸上に引き上げ、遺構として保存展示することになりました。現在、追浜展示場の他に、うみかぜ公園(横須賀市平成町)に「大型兵舎」のみが展示されています。
追浜展示場に展示されているのは「探照灯施設」「観測所」「砲台砲側庫」です。
それぞれの建物がこちら。

「探照灯」
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「砲台砲側庫」
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「観測所」
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それぞれの建物は、第三海堡のごく一部を切り取っただけですが、かなりの大きさがあります。
海堡全体が、東京ドーム2個分の敷地があったのも頷けます。
まずは「探照灯」から見学。
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海堡頭部にあった探照灯施設。
探照灯とは、夜間の敵艦などを探知する明かりを発生させる装置です。
この施設の中央部に、探照灯の台座ががあります。
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この台座に探照灯を設置します。
さらに、普段は探照灯を建物内にしまっておくために通路部分には探照灯を運ぶためのレールがあります。
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レールも意外と綺麗に残っています。
さらにこの建物には2階部分があり、左右に広がる通路の奥には階段がありました。
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この暗い通路の奥に階段があります。
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階段を上がることができますが、2階部分は立入禁止。
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階段の先の風景は、奥にある日産工場がよく見えました。
続いては、「砲台砲側庫」
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海堡頭部から陸揚げされた弾薬庫です。
内部は2室に分かれ、脚壁から天井の半円形アーチまでコンクリートの一体構造になっているらしく、鉄筋などが無いそうです。
入口上部には、砲弾が着弾したかを確認するための観測所があったそうです。
内部はこのようになっています。
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この室内に砲弾を格納していました。
小窓から砲弾を出し入れしていたらしく、砲弾を運ぶ用の鉄製の器具の痕跡が残っています。
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外から見るとこのようになっています。
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ここから、重い砲弾を出し入れしていたんですねぇ。
さらにこの弾薬庫の床は、微妙に傾斜がついており奥へ行くほど低くなってます。
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弾薬を管理する上で、転がって外へ出ないようにするためのなんでしょう。
また、床面は綺麗。
これは、展示の際に補装したわけではなく、もともとこのように綺麗な状態だったそうです。
次に、「観測所」です。
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観測所は指揮官の位置するところで、指揮、観測、通信連絡などが行えるように高い場所に設置されました。また、この建物は第三海堡最後部左側のものであり、砲側庫と一体構造になっています。
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こちらの写真は、砲側庫側からとった写真。
先ほど紹介した砲側庫と同じような小部屋と小窓があります。
また入り口部分のアーチ構造は非常に精巧に作られており、芸術性を感じます。
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うーん美しい。
観測所内は、円筒状になっています。
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本来は、ここから上へあがる階段か何かがあったのではないか?ということらしいです。
遺構として残っているのは外殻部分だけで、上へあがる手段はありませんでした。
そして、これら全ての建造物には排水管が設置されており、水道施設が完備されていたのが確認できるそうです。明治-大正という時代に造られたもののどの施設も非常に良い状態のままでした。
これは、砂利などを絶妙に配合したコンクリートのおかげらしいです。
もうちょっと詳しく聞けばよかったんですが、すっかり忘れてしまいました…。
以上の施設が見学できます。
遺構の向かい側には、小さな小屋があり、そこで第三海堡についての資料が展示されていました。
ミニチュアや写真など豊富な資料があり、さらには大変親切に説明してくださる方がいらっしゃいました。
この第三海堡遺跡の周辺には、貝山地下壕という巨大防空壕があります。
そこに落ちていた海軍ゆかりのもの展示されていました。
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ちなみに、貝山地下壕は2020年頃?に一般公開されるとか。
いままで謎に包まれていたあの巨大防空壕が、ついに見ることができるなんて…!
これは楽しみです。
それと、追浜と言ったら旧日本海軍ロケット戦闘機「秋水」の試験飛行が行われた地でもあります。試験飛行は失敗。近くの鷹取川に墜落してしまいます。
そんな悲しい地であり、海軍航空隊予科練発祥の地でもあります。
今では、日産の下町となってしまいましたが、貝山地下壕の一般公開を機に、「海軍の街・横須賀」を復活させてもらいたいですね。